スウィートチルドレン時代からdookieの時期に至るまで、グリーンデイはずっと休まずに走りつづけてきた。夜も寝ずに走りつづけてきた結果がdookieの大ヒットであり、大ヒットのおかげでさらに休むひまなく走る羽目になった。そういった状況の中、誕生したのが4枚目のアルバム「Insomniac」だった。
この不眠症と言うタイトルのついたアルバムはそれまでのアルバムとは、その性質を大きく異にしていた。前作までの全体的な傾向であったポップさを押し殺し、暴力性や喪失感などのネガティブな感覚がアルバム全体を支配していた。
そこにはかつてはあったような孤独感や将来、年を取る事に対する漠然とした不安、自虐的なまでの内省などはない。インソムニアックにあったのは怒りと攻撃、あきらめなどことごとくネガティブな感覚だった。当然、音的な面でも変化があり、dookieの聞きやすいポップパンク的なサウンドは影を潜め、ファーストでヘヴィーで、やはりネガティブなサウンドがそこにはあった。
何が彼らをそうさせたのであろうか。本人達がその事については多くを語っていないので推測でしか物を言えないが、メジャーになり、周りの環境は大きく変わった。それまでのギルマンストリートの家族のような暖かいコミューンにも見放され、それとは対照的にテレビや国民は彼らの意思とは関係なしに、彼らをスターとして扱った。そしてメロコアという新しく作り上げられたシーンは過熱する一方。上手く言い表せないがそんなやり場のない怒りと悲しみが支配したアルバムであると言えよう。
また、前作に対してプロデューサーのロブ・キャバロがグリーンデイの意図しない余計なアレンジを加えた事に対する反抗と言う面もあったのかもしれない。いずれにしてもこのアルバムはスタジオではなくガレージのような所での録音を中心としている。
アルバムがネガティブでどちらかと言うと一般受けしないようなものだったため、売上は若干低迷した。しかし、グリーンデイはそんな事はお構いなしにツアーに出発する。しかし先にも書いていたようにグリーンデイは本当に疲れていた。アルバムを作りツアー、アルバムを作りツアー、アルバムを作りツアーの連続でゆっくりと休んで疲れを取る事も出来なかった。その反動がこのインソムニアックツアーで出てしまう。それはツアーの途中でのキャンセルとしばらくの休養だった。
不眠症から解き放たれ、しばし眠りについたグリーンデイだが、その眠りから醒めた彼らはまたすぐに動き出す…
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